若い葉たち

2024年6月15日

とある森を歩いているとこんな葉っぱを見かけました。
皆様この葉っぱなんだかわかりますか?

この状態でわかる方は、なかなかの植物好きと言ってもいいかもしれません。

茎の部分を見るとこのような模様があります。この模様がある”生き物”に似ていることが名前の由来となっています。
この模様を見たら、わかる方多いのではないでしょうか。

正解はこちら!(ピンぼけでごめんなさい)
マムシグサでした。
大体はこの姿を見ることが多いですよね。もしくは真っ赤な実が着いた状態で見ることが多いと思います。

華々しい綺麗なお花があるというわけでもなく、眺めが良いというわけでもなく、笹の道とオオヤマフスマがちょこっと咲いているくらいのなんてことのない森の中で、マムシグサの小群落があったわけです。
花を咲かせるまで数年かかるということですから、花の付いていない葉っぱの個体はまだ若いということ。若い世代が伸び伸びと成長しているこの森…なんだか良い環境だなぁとシミジミ感じました。
このまま伸び伸び成長してほしいものです。

さて、そんなマムシグサですが、面白い生態をしているんです。

この葉っぱがクネっと曲がった様子がマムシの頭に見える、なんていう説があったりするのですが、その頭の部分が仏炎苞と言われています。水芭蕉にも同じように仏炎苞がありますよね。
この仏炎苞の中に花序(肉穂花序)があり、雄しべや雌しべがあるわけです。

マムシグサは雌雄異株…つまり、雄花(雄しべのみ)と雌花(雌しべのみ)それぞれに分かれます。これは多くの植物に当てはまることですが、マムシグサの凄いところは「性転換をする」ことです。

雄花だった株がある日、雌花になるんです!
まず最初の数年は葉っぱだけつけて成長し、体が大きくなると雄株になり、さらに成長すると雌株に変化します。
面白いのは、雌株の成長があまり良くないと、次の年には雄株に戻ってしまうことがあるんです。不思議ですよね!

他にも種を残すための戦略も面白く(見方次第では残酷?)、上の写真をよく見ると、仏炎苞の中からチラッと棒が見えていますよね?付属体と呼ばれるもので、ここから香りを出し、キノコバエの仲間を呼び込みます。仏炎苞の中に入ってしまうと入り口からは出ることができなくなるんです。雄花に入った場合は、必然的に花粉まみれになります。雄花の下部には小さな出口があり、出口を探し回り花粉をいっぱいつけたハエは、ようやく出口を見つけて脱出し、次のマムシグサのもとへ行きます。

小さな隙間がある雄花。


一方で雌花ではどうなるのか。基本的な構造は一緒で、香りに誘われたハエは中に入ると、入り口からは出られないので出口を探し回ります。雄花でいっぱいつけた花粉を雌しべに受粉させることに成功したマムシグサ。ハエとしては早く出ていきたいところですが…雌花には出口はないんです。つまりここに迷い込んだハエは出ることができず仏炎苞の中で命尽きるまで閉じ込められてしまうのです。
こうして受粉に成功したマムシグサは真っ赤な実をつけて、次の世代へバトンを渡すわけです。

生物の生きる術は様々あり、それぞれが懸命に生きているんです。
次の世代に命を繋ぐために。

そんなドラマが相まみえる環境がこの森にはありました。

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