水という旅人の話
※長文です。気楽に見てください。
鳥の囀りが響き渡る早朝。
まだ太陽も顔を出していないのだけど、鳥たちは元気に歌っている。その歌声により私は目を覚ます。時刻はAM03:00。
この日はパチッと目覚めが良く、二度寝することはなかった。
「さて、なにをしようか…」
カーテンを開けると、曇り空が広がっている。天気予報通りの曇りだった。
朝早く起きた時は、庭のお手入れをすることがあったけど、ちょっと寒そうだなぁ。
かといって室内作業するにも、家族は夢の中で邪魔するわけにもいかないし…。
「そういえば最近、展望台に行ってなかったな」
外の気温は一桁、5月といえど寒い。暖かい服装に着替えて車を走らせた。

信号待ちの時、パッと空を見ると、随分と低い位置に雲があることに気づく。
「これは展望台は真っ白かな…」
今いる弟子屈の町の標高は110m程で、これから行こうとしている展望台の標高は500m程。つまり、これからどんどん雲の中に入っていく、ということなのだ。
「う~ん」頭の片隅に後悔の文字が出始めていたものの、とりあえず向かってみた。
展望台に到着。
そこにはなんと!神秘の湖摩周湖が!

見えませんでした(笑)
「そりゃそうか」と案外サラッとした心境であたりを観察してみる。
雲のど真ん中に居る時はもっと”霧の中”状態になるのがこの場所の特徴です。布施明さんの曲である”霧の摩周湖”から”摩周湖といえば霧”というイメージが広まったようですが、実際に霧に包まれることがあるんです。
今日は?というと、霧の中というよりも雲の近くといった感じ。
「これはもしかしたら!」と目的地を急遽変更し、車をまた走らせた。

ビンゴでした。正面に望むは摩周岳、その眼下にある摩周湖の上に広がる雲”雲海”です。
釧路の方向から(写真の右側)雲が流れてきているのが目で理解できるほど大量であった。
どんどん押し寄せる雲は、まるで海の波のように動くこともあれば、山にぶつかって渦巻くことも。雲が湖上で踊っているかのようなその姿に心が躍る贅沢な時間。
摩周湖の雲のショーを堪能しながら反対方向を見てみると…。

こちらも雲海に包まれていました。正面の山は藻琴山。
この写真を見て、釧路からどれだけの雲が流れてきているのか、わかりますでしょうか?

こちらが同じ場所で撮影した雲海のない写真。こうして見比べてみるとわかりやすい。
手前の硫黄山がスッポリ隠れるほど雲があることがわかる。
そしてよく見ると、上空にも雲がある。
上にも下にも雲がある光景…チョット不思議な世界観が視野いっぱいに広がる。
この目の前にある雲海、すなわち雲は”水”の集まりで出来ている。
~この水はどこから来ているのか?~
雲の流れを辿ると、釧路の方から来ている。釧路の海、太平洋の水が雲になり、釧路湿原を通り標茶、弟子屈へと来ているということ。そして屈斜路カルデラに辿り着くわけだ。

水の旅人が多い時は外輪山をも超えて美幌や北見の方へ進んでいく。外輪山を超える程ではない場合はそこで上空へ登っていく。
~この雲海の水は海から来るが、海の水はどこから来るのか?~
釧路の海の場合は、釧路川の源流である屈斜路湖や摩周湖の水といえる。
~では屈斜路湖や摩周湖の水はどこから来るのか?~
それは雨や雪からなる水である。それらも雲となって移動してくる。
摩周湖や屈斜路湖に降った雨や雪が湖となり、その湖の水は地下を通って下流へと進む。地下水となって進んだ水はやがて伏流水・湧き水として台地あるいは川へ出て、釧路川に合流する。辿り着くは釧路の海で、そこから太平洋に行くもの、知床方向へ行くもの、それぞれの旅路となる。
何十年何百年の長い旅路のホンの一部だけを我々は目にしているわけです。その一部だけでも感動する光景だが、その旅路に思いを馳せるとより深く鮮明に見えてくるはず。
そんな人生の1ページに残るような素敵な体験ができるのが弟子屈町なのです。
皆様も機会があればぜひ!弟子屈町に足を運んでみてください。
来て良かったと思える体験があなたを待っていますよ。